7歳の頭脳かた考のロリ婆 -芹ーグ最多得点王は誰の手に-
↑サッカーする芹沢あさひ(人5分ボール5分)
逆転ー こと勝負において、甘美な響きを纏う不思議な語である。
スポーツにおける観客は各々対立した意思を以て動く珍しい集団であるが、本質はみな好転や一転攻勢の狂信者であり、似たり寄ったりの烏合の衆である。
選ばれるのは一握りの役者であり、それも彼ら彼女らの意思に寄り添うことはない。役者たちが信じるのは理想像か、勝利の狂信者か、それとも自己犠牲か。
ひとつ例を挙げるならーー
Ⅰ
芹沢あさひは病室にいた。木々は枯れ、稲穂の刈られた地にめがけ葉が欠ける。あさひは唯其れをじっと見つめる他なかった。
「サッカーがしたいのかい?」
「野球がしたいです」
お尻の方からの声だ。つくづく患者思いの医者である。気さくな入りに鑑みると、今日も今日とて大した話はないのだろう。ならと上体を起こし顔を見やると、老衰にて細った体躯が有る。いや、この老体を見やるに心配する立場にはいないだろうとも思う。
知人がどうとか、スポーツがどうだの、流行りのファッションでさえ心の飢えた子供舌には薄味だった。不謹慎な話、誰かがポックリ逝けばそれだけで趣が変わっただろう。それもこの激のついた爺さんの前には口が裂けるまで躊躇している。
「...そうそう野球といえば綱太サン、今期も大活躍だねー」
「この前サッカーに転向...って聞きましたよ。」
「いや、彼は内藤恒人だよ。野球の綱太とは多分人違いじゃないかな。そう彼はねー...」
...私はなんとなく覚えている。今でも担当医が時々口にするが、それよりも前に見たことがあるはずだった。
入院二日目。事務所や見舞の連絡が落ち着いた夜に、それは現れた。互いに面識があった故にただの激励と一見した、これがすぐさまに訂正を貰うこととなるわけだ。
「優勝カップと、最多得点賞を、各一名様にプレゼントします!」
「それサッカーすよ。まさか転向でもするっすか?」
「指摘して頂いて
光栄です」
覚えが効いたのは一言で終い、しかし覚悟だけは一丁前に確かであった。どうせ忘れてしまうなら、あの夜駆け出した綱太は嘘じゃなかったと思いたい。
嫉妬か渇望か、とにかく私は入院してからマスメディアというものを避けていた。携帯電話が手元にあればと思うが、生憎屋上からの位置エネルギーに耐えかねた。以来提案を放棄する形でずるずると禁欲を続けている。自分なりの自由研究とでもいうべきか。
中間結果として、暫く見ないうちにアイドル活動をほぼ全て忘れるに至った。
「内藤さんも忙しいね。地元のインタビューだと『カタール、たまに来ると気が引き締まりますね!』って言っちゃって。時差に慣れた風には見えないんだけどね笑」
「カタールって...ここからどれくらい遠いっすか?」
「えっ?うーん...時差が6時間だからだいたい10000kmくらいだね」
綱太はあの時確かに決意した。それならあさひはカタールからセリーグにリモート参加する決意である。それも選手として。
「決めました。カタール、行くっす!」
Ⅱ
「いいかお前ら!前も後ろも信じちゃうこと!離れると狂っちゃうからな!」
「「「「「「「「「「「「
イヤーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
グワーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ペチペチペチペチペチペチペチペチペチ
」」」」」」」」」」」」
選手団の怒号が高々と夜更けを告げる。選手やサポーターの熱意は十分なようで、その熱気はまさに日の丸といった展覧である。監督も負けじと指示を出すが、対照的で勢いに欠けた。
我が国は世界的なポリティカルコレクトネスの大波に呑まれた結果、日本代表監督を7歳の少女へ変更。敢えて最年少かつ女性監督を起用することで「サムライブルー」もとい「ロリコンブルー」へと変貌を遂げた。
「(サッカーを)愛してるから入っちゃった...♡」
周知の事実だが、ロリコンはブルーではなくレッドである。出場選手の潔白を周知する一方で大量の綱太を選抜、同性愛者で固める旨にて現状を打破するに至った。
これも周知の話題ではあるが現在の日本代表はグループ2位の勝ち点3。総当たりの最終戦を残すのみである。この状況での総入れ替えに世界は驚愕したが
「後進国日本はやっとGlobal standard*1に追いつく意思を見せた。我々は新たな門出を賞賛しなくてはなりません。」
と、賛成多数により可決。ネイマール以外は誰も抗議の姿勢を見せなかった。
「このままノックアウトステージに行きたい...どうする?」
「相手コートにて、歓声を浴びてるところで貫いてください!」
曰くこの試合、辛勝になるという。というのもドイツ対日本や日本対コスタリカにて同様の状況が起こっており、それぞれ格上に勝利を収めている。であれば流れに乗ずるというのが作戦の本懐である。
唯一致命的な問題点を挙げるとすれば、その関係者を一人残らず日本に帰らせたくらいだろう。実は綱太が全員ロリコンで常時勃起しているこの現状に比べたら、些細な問題と言える。
「まずFW、右に綱太、それから左に綱太」
「「うっ!」」
「続いてMF、右から綱太、綱太、綱太、綱太、綱太、綱太、綱太!」
「「「「「「「うっ!」」」」」」」
「DFはミーティング通り、綱太と綱太で行く。」
「「うっ!」」
「GFはー...
「待って下さいっす!自分もいれてほしいっす!」
スタジアムの交通網に若い声が響く。が姿が見えない。聞けばこの女、自身を病欠扱いにしてW杯へリモート参加したいという。大学四年の選択授業みたいな言い訳ではあるが、母体は会場のペッパー君にて賄える。
これしかない。チームの皆が勃起しながらそう確信した。
「じゃあMFにセンター綱太抜いて芹沢!センターバックは綱太で行こう!」
「うっ!」「いくっす!」
「陣形はミーティング通り2・7・2・1・0で行く。絶対勝つぞ!!」
かくして、日本代表は12人でスペイン戦に臨む。日本のGlobal standardを世界に見せつけるために...!
そういえば今のポケモンってスペインモチーフらしいっすね。まだ遊んでないんすけど、スペイン発祥で日本にて盛んってことで男根ロデオマシーンがモデルのポケモンだけ予想しておきますね。
Ⅲ
ー同日 日本ー
私は考える葦にはなれなかった。
若くして財を成し、人徳も成した私に敵うものはなかった。生涯に行く当てもなくそこそこに営み、いずれ子を成し孫を成した。いつかはザナドゥ*2に行き着くものだとすら思えた
私は迷える子羊であった。
財や人徳はなんの道標にもならなかった。そんなものザナドゥには必要なかったのだ。なら、生きてやる。そうして千鳥足が堅牢な根を張るまで生き永らえてやった。
この歳になって、それは彗星の如く現出した。
欲望のままで、迷いがなく、私に心を開かない。が、惹きつける核心があった。あぁ、私は長らくこれになりたかったのだと肌で感じた。
結局私は饂飩屋の釜でしかなかったのだ。不満から目を背け、風体に逃げ、評定に逃げた。舵を失った牛車では到底ザナドゥには至らないのだ。
堅牢な根がなんだ。若気の至りが徘徊老人に代わっただけだ。逃げる理由まで世間体に任せて生きてきた証だった。今だって世間体に逃げて、医者なんかやってる。
否、不甲斐ないに脱走までされて、今の私は医者ですらなかった。それならば
「若い甲子園が好きだから」
二つの火蓋が切って落とされる。
Ⅳ
この試合が初監督にして大一番とは、ずっと心得ていた。でもこんなの生まれて初めてだよパパ...マジで負けちゃったらどうしよう...マジで負けちゃったらどうする?
「あいつら一人多いぞ!俺たちを不戦勝にしろ!」
「抜いてください!」
スペイン側の抗議も虚しくキックオフ。...オフ?
「日本の代表は弱いな!俺たちを見ろ。絶対負けないぞ!」
黄金の風がすうと来る、来るよパパ...。焦らずゆっくりと、ゆっくりとね。
綱太でいっぱい舐めてた玉もすうと掬われる。あれっ27210のフォーメーションってもしかして...ゴールキーパー不在?どうしよう...。
「ここは通さないっすよ!!」
否、我々は13人にて代表足りえる。芹沢が入ッチャッて7人になったMFを抜けるには相応のミスが起こり得る。これを前線に配置することで定期的にカウンターを回せるのだ。
思えばこんなに大きな助力は初めてだった。欧米諸国とグチュグチュに吸い付いちゃってる政府の要望にて選手団にポリティカルコレクトネスが適応されたわけだ。こんなチャンスなかったはずだった。
「おい女どけろ!」
「若い子嫌いだから」
掲示板の愚痴も全部大事にしまっとく。いつも日本と一緒だから。
「Japanese HENTAI!!」
「キモ...」
現地民の愚痴も全部大事にしまっとく。いつも日本と一緒だから。
「待って下さいっす!自分もいれてほしいっす!」
なんだか、温かった。それだけでいいと思えた。
「おっペッパー君やん!コーラ貰うで!」
「はいっす」
配膳しとるやん。あれだめやな。
スパァン!!
「は...
入゛っ゛た゛ぁ゛~゛(泣)」
「やられてしまいました。まさかこんなにとは思わなかったので」
前半2分、弾けた球を網が捕まえる。歴代W杯でも最速クラスの失点である。と同時に、まっとうな試合にならないことを暗に告げていた。
これは...スペイン戦のコスタリカみたいな試合になりそうです。仕方なく入れ知恵を仕込み、FWの綱太を綱太に換え再びキックオフ。の直後に試合が動く!
「抜いてください!」
綱太がスパイクを用いてボールの空気を抜いた。直ちに替えの球が運ばれるが、盲点。7人のMFがそれを許さない。
「「「「「「「抜いてください!」」」」」」」「抜くっす!」
日本はこの後無失点で前半を終えた。なおアディショナルタイムは43分追加されたが、湧き潰しを徹底したことでTOD*3を成立させた。
一方ネイマールは今だ転がり続けていた。なんか日本が敗退するまで抗議を続けるらしい。
Ⅴ
「いいかお前ら!こんな感じならもう...どうしよう...」
「ググっちゃう...!」
前半は見事な裁量にて失点を抑えたロリコンブルーだが、結果互分以上でなければグループ突破は非常に困難である。つまり後半は小細工を抜きに追いつく必要がある。
監督は今更にも相手選手の対策に追われている。戦術が煮詰まっていない辺り同様のカウンター戦法が妥当と思う。それならと提案の形を取る
「ゴールに全員集まります?絶対点取られないっすよ」
今まで鼻くそほじった手でキャプ翼読みながらリモート参加してきた自分だが、まさか全面的に採用されるとは思わなかった。確かに前半と変わってロスタイムは発生しないが、囲まれる状況から逆転の一手は遠い。が、今ある中では最善手であろうか。
「どうせ数を活かすなら...」
ハーフタイム後、日本代表は選手全員を前に上げ攻撃の意思を見せた。一方スペイン代表はスタメン等を惜しみなく使い、保守的な動きを見せる。
ラモスが球を蹴り味方チームを走らせる。
そして綱太はラモスを蹴り飛ばした!
本田圭佑「このファールの取り方上手いな~笑笑」
「今っす!走って!」
綱太が全員走り出す。勿論目標はボール以外の全てだ。
イヤーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
グワーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ペチペチペチペチペチペチペチペチペチ
選手が構える前に近づき、全員に飛び蹴りをかます。倒れたところに関節技を仕掛けることで見事、審判がレッドカードを出すよりも早くスタメン全員を再起不能にした!!
「蛮人だったんですけど」
今回の裁定では一試合に5人までしか選手を交換できない。つまりここで全員倒してしまえばサッカーは5vs5のフットサルと化す。綱太はもれなく全員一発退場を食らうがそもそも12人で戦っている我々にはどうでもいい。最初の交代と併せ当初の予定は達成できると、そう思っていた。
「殺すぞ」
負傷したスペイン代表が全員立ち上がってきた。
Ⅵ
「やっべ逃げるっす!プランB!」
私が不甲斐ないからか、選手たちは自身の意見を以てゴール前に立て籠っている。一方のスペイン側はノックアウトステージに向けた練習が始まっている。5vs11では勝負にならないとも読んでいるのだろうか。
「殺すぞ」
特にラモス選手の興奮具合はこっちも感じちゃう。
後半40分、最早シュートすらやめてチーム内でパス回ししてるし、芹沢はアクエリ配ってるし、解説席の本田圭佑も放送事故や!とか喋ってるらしい。
人事を尽くして天命を待つとはあるが、起こらないときはは起こらないものである。それでもなお、信じるしかないのはギャラリーの宿命といえる。
いや、我々にはギャラリーがいた。相手がスペイン...いやパルデアなら行けると、そう確信した。
Ⅶ
「殺すぞッ、殺すぞッ、殺すぞッ...」
「lol.ラモスの執着力は最高だな!」
「ちょっとボール預かります」
「殺すぞ」
どさくさに紛れてボールを盗ったあさひに、ラモスが襲い掛かる!が日本だって一人じゃない。ラモスにまた襲い掛かる影があった。
「今回の目玉は逆転シーンなんでね」
綱太がグーパンチでラモスを今度こそ機能不全に追い込む!その隙にあさひは今試合初のパスを使う。
バトンを渡されたのは、監督だった。頭の固いロリババアの姿がコート中にあった。そしてババアが繋ぐバトンは、観客席へ向けられた。
「皆さん!新生日本代表にもう一度再起の祈りを!お願いします!」
「カタール方面からだ...」
老体に歓声がなびく。日本国民に残された術は、祈るのみだ。
沈黙が流れた。
聞いた話によるとあの本田圭佑ですら黙祷を捧げたらしい。
ババアが諦めて走り出す頃にはスペイン代表は全員陣形を整えていた。その上、スペインのエンリケ監督までもがユニフォームを拵えて聳えていた。
「うちの選手が世話になったな」
「これが日本のGlobal standardなんで。もしかして狂っちゃう...?」
「いい度胸だ。この1on1で勝利して、日本のサッカーに屈辱的な決勝点を入れてやる。」
ドガン!!ゴロゴロ.......
沈黙は突如破られる...!観客の注目を一点に背負う爆音がスタジアムに響く!!
「Fuckin'jap!!サッカーはお前らのスポーツじゃない!!!」
スタジアム中央からネイマールが此方へ真っ直ぐ転がってきた!
「まさか...最初からこれを狙って...!」
「ー激だね。」
ババアはネイマール選手にライドオン。曲芸にある玉転がしの態勢をとりゴールまで一直線に向かう!
「あのババアを止めろ!お前らならできるはずだ!」
スペイン選手は転がる物体を止めんと立ちはだかるが一転、サッカー界きっての天才肌であるネイマール選手のボールは誰一人奪えずついにはキーパーの股を抜いてシュートした。
スパァン!!
「は...
入゛っ゛た゛ぁ゛~゛(泣)」
感涙でボロボロの監督を全員で取り囲む。日本はドーハの喜劇を巻き起こしたのだ!
「殺す...ぞ?」
試合を再開するスペイン選手。しかし、そこにはありえない数の綱太がいた!
日本サポーターのさいきのいのりによって、退場となった綱太がHP半分、つまりイエローカードの状態で復活できたのだ。さらに日本代表にあったロリコンへのレッドもイエローカードまで緩和されたので、前日本代表も全員起用可能にしていた!急遽カタールへ舞い戻った長友、権田、宮田...名だたる選手が全員コートにいた!
「大丈夫?全員やることは解ってる?」
サッカーを愛する全世界の民が静かに頷く。もう、躊躇しない。我々はひとつだ。
「援軍...突撃ィィッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
その後引き分けにてめでたく試合終了したが、コスタリカが絶好調すぎて全員ぶっ飛ばしたせいでグループ突破はならなかった。
あとネイマールはあの後一ヵ月転がって日本まで旅行したらしい。
次回もお願いします。
*1:我々の文化
*2:モンゴル帝国(元)のクビライ・カアンが、モンゴル高原南部に設けた夏の都、上都 (拼音: Shàngdū)。イギリスの詩人サミュエル・テイラー・コールリッジが『クーブラ・カーン(英語版)』で歓楽の都として歌いだして以来、幻想的な名前として使われるようになった。また、文献によっては、桃源郷と訳されることもある。
*3:今回のW杯ではアディショナルタイム中のロスタイムはビデオ判定にて延長するらしく、成立しない。